PREVENTIVE DENTISTRY
歯を守るために知っておくべきこと(1)
抜歯の原因から予防を考えよう
歯の本数は、親知らずを除いて上下顎の歯を合わせて28本あります。
平成28年度の歯科疾患実態調査では、
現在の日本人の平均喪失歯(抜いた歯)は、50歳で2本以上
そこから少しずつ歯を失うペースが上がってきて、70歳で8.6本以上の歯が失われています。
将来、歯を悪くしないようにするためには、どうしたら良いのでしょうか?
歯が悪くなる(=最終的に抜歯になる)ことを避けるためには、抜歯の原因が何かを知っておく必要があります。
そこで、永久歯の抜歯原因を調査した報告書について解説していきます。
永久歯の抜歯原因調査報告書とは?
平成17年にまとめられた、財団法人8020推進財団の調査報告です。
全国の歯科医院での抜歯処置とその原因を調査し、歯の喪失の実態と原因を把握するために行なわれました。
http://www.8020zaidan.or.jp/pdf/jigyo/bassi.pdf (8020財団 8020調査・研究事業より)
どんな調査?
2005年2月1日~7日の7日間に実施され、その間の全国の歯科医院(データ回収数2,001件)における抜歯症例に関する様々なデータをまとめています。
日本人の歯の喪失の主原因を把握することができる有益な調査です。
現在が2018年ですから、今からすでに13年経過しています。しかしながら最近、各地で行なわれている調査(全国ではなく地域レベル)の結果も、ほぼこの全国調査と一致していますので、抜歯原因を説明をする際には今でもよく引用されているのです。
抜歯の主原因は?
対象患者数7,499名 調べた抜歯総数は9,350歯
これらのデータから抜歯の主原因を考えていきます。
上の円グラフは、抜歯原因の割合を示したものです。
歯を失う原因の第1位は「歯周疾患(歯周病)42%」、第2位は「むし歯 33%」、これらは歯科の二大疾患と言われています。そのあとに「その他 13%」「歯根破折11%」「矯正治療1%」が続きます。
「その他」の内訳としては、そのほとんどが親知らずの抜歯になっています。
「歯根破折」は、転倒や事故による外傷を原因とするものもありますが、失活歯(神経をとった歯)の歯根破折が経験的に多いと考えられます。
失活歯とは、むし歯が進行したことによって歯髄処置(歯の神経をとる)を行った歯です。特に繰り返しむし歯の治療をした歯は、残っている歯質が薄くなっていて歯が割れやすいので要注意です。
そのため歯根破折も、元の原因はむし歯由来である可能性も高く、そう考えると、
むし歯33%+歯根破折11%=むし歯由来の原因44%で、「歯周疾患42%」に匹敵する原因と考えられます。
ここで大切なことは、
特殊なケースを除いて、歯周病もむし歯も予防できる疾患だということです。
つまりこれらを原因とする80%近くの抜歯は、予防によって避けられる可能性が高いとも考えられます。
通常、食事をするたびに脱灰と再石灰化が繰り返されています。ところが、過度の脱灰には再石灰化が追い付きません。
そのまま進行してしまうと自然治癒することはなく、自力で治すことも不可能となります。
虫歯を予防するためには、日ごろから丁寧な歯磨きを行ない、健康的な食生活を送ることが大切です。それでも虫歯になってしまったら、放置せずすぐにご来院ください。
■まとめ ・抜歯の主な原因は、「むし歯」「歯周病」で80%近くを占める→「むし歯」も「歯周病」も予防が可能、80%近くの歯を残せる可能性がある。 |
原因別にみた抜歯と年齢の関係
抜歯の主原因を年齢階級別にみたデータがあります。
右のグラフは、抜歯本数(縦軸)と年齢(横軸)を示しています。
むし歯
まず、むし歯。
割合的にみると、40歳以下の抜歯原因の第1位がむし歯です。
そして全年齢層において、比較的高い抜歯本数を示しています。
つまり、むし歯はすべての年齢において予防が必要ということになります。
歯周疾患(歯周病)
歯周疾患(歯周病)は45歳以上の抜歯原因の第1位です。
歯周疾患は若年者では少ないが、年齢が高くなるとともに増加する傾向にあります。
厚生労働省が行なった平成23年の歯周疾患実態調査では、歯肉に歯周炎を認める人数は、45-49歳の年齢階級層で、各年齢階級層で最高の約87%を示しているというデータがあります。
抜歯本数は60-64歳の年齢階級層で最大値を示していますので、恐らくこの年齢階級層の人、はその10~15年前(45−49歳)には歯周病の兆候があったと思われます。
歯周疾患は少なくとも30歳後半から予防を始める必要がありそうです。
そして、報告書には「現在歯数と抜歯原因の関係」にも言及しており
・・・いずれの年齢階級においても、現在歯数が少なくなると歯周病による抜歯の割合が多くなる傾向が見られた・・・ (永久歯の抜歯原因調査報告書より引用)
歯が少なくなると、1本当たりの歯にかかる咬む力は増えていきます。歯周病は、歯を揺り動かすような力がかかるとその進行を早めてしまいます。
適切な治療を行なわないと、ドミノ倒し的に抜歯が増えてしまうのです。
歯周病になってしまったら、抜歯する歯を増やさないように歯周治療を早めに行なうことも大切です。
■まとめ
・「むし歯」は全年齢層に対して抜歯の原因となっている
→すべての年齢層で、むし歯予防が必要
・「歯周病」は、45歳以上で抜歯の最大の原因となっている
→30歳後半からは歯周病予防の意識を!